新くんはファーストキスを奪いたい
エピローグ



 二日間の滝谷高校の学祭が、無事に幕を下ろして一ヶ月が過ぎた。

 そして夏休み真っ只中の鞠は今、快晴のもと混雑するフードエリア街を一人歩いている。

 ここにくるのは二度目だけど、どこか新鮮な気持ちにさせるのは。
 きっと、あの頃にはなかった感情が、鞠の中で生き続けているから。


 時計の針がもうすぐお昼の12時を示そうとする時、見覚えのあるお店の前で足を止める。



「わ、今日も忙しそう……」



 ライトベージュのレンガ調の壁。淡いピンク色の軒。
 新の姉、椛が営むクレープ店だ。

 店内はもちろんのこと、テイクアウト受付用のカウンターにも数組のお客さんが列をなしている。

 すると、そのカウンターで対応していたバイト中の恭平が鞠の来店に気づいた。



「あ! 鞠ちゃん!」
「恭平くん、お疲れ様」
「新待ってんの?」
「うん。でも忙しそうだね」
「夏休み期間に入ってからずっと忙しくて! 呼ぶ?」
「ううん、外で待ってるから大丈夫!」



 接客の合間に笑顔を浮かべて声をかけてくれた恭平に感謝しつつ、お邪魔しては悪いと思ってお店から少し離れて待つ。

 ピンクのTシャツにデニムのミニスカートという夏らしい私服で、少し胸をドキドキさせながら。
 変なところないかな?と、自分の姿をチェックする。


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