新くんはファーストキスを奪いたい
(なんでこんなこと書いた昨日の私⁉︎ 心に留めておくもんでしょー!)
しかもこんなイケメンに見られたなんて!と後悔してもし切れない鞠。
それを知った今の新は、心の中で自分の事を見下していると思った。
顔も良くて入学早々モテモテの新にとっては、まだキス未経験のお子ちゃまにしか見えていないだろうから。
「で、昨日泣いてたのはその告白が失敗したから?」
「違うよ! 告白してないし!」
「でもそこに書かれていたのは告白手段だろ?」
「っ……そ、それは」
鋭い新の指摘に返す言葉もない鞠が、悔しそうに歯を食いしばる。
ただ、一向に表情の変わらない新に対して、徐々に疑問が湧いてきた。
鞠の告白話に興味があるわけでも、無理に問いただしたいわけでもなさそうで。
彼にとっては、何の問題もないただの“会話”なんだろうなと考えが変わってきた。
だからつい、真実を述べたくなったのかもしれない。
「……告白する間も無く、失恋しただけです」
「そうなんだ」
「(慰めの言葉も無しかい……)一条くんも昨日、呼び出されてたよね?」
「え?」
「他のクラスの女子に、あれも告白だったんでしょ?」
尋ねられてばかりじゃ癪だからと、負けじと新に質問を投げかけた鞠。
昨日、教室を出る際に見かけた新と他クラスの女子が、どこか落ち着いて話せる場所へと向かったのを見かけたから。
すると、否定することもなく結果を話すわけでもなく。
淡々と個人の感想を述べ始めた。
「俺、グイグイ来られるの嫌なんだよな」
「……え」
「相手のこともよく知らずに付き合えないし」
「は、はあ」
「俺と付き合った事実が欲しいだけの女子ばかり」
「……へ〜、そうなんだ〜」
モテる男にしか発言を許されない台詞が今、鞠の耳に続々と届けられた。
グイグイ来られる経験なんて一度だってしたことないから、新の気持ちがさっぱりわからない。
鞠は適当な相槌しかできなくて、自然と面倒そうな表情に変わっていった。