新くんはファーストキスを奪いたい
02.委員会を決める
同日一時間目のHRは、昨日から予告されていた委員会の担当決め。
部活への入部を予定していない鞠は、せめて委員活動は参加した方が後ろめたさは無いと思い。
どれにしようかと悩んでいるうちに、立候補者が素早く手を挙げていき、ほぼほぼ決まってしまっていた。
残るは仕事が多くて年中忙しそうなイメージのある、美化委員の枠ただ一つ。
「男女ともに誰も立候補がないな、誰かいないかー?」
委員決めを進行していた学級委員長も困り果て、ついに担任の兼松先生が声を上げるも。
教室内は気まずい空気が流れ、ますます手を挙げづらい状況だ。
(校内清掃、花壇整備……確かに忙しそうだなぁ)
しかしこのままでは部活動も委員活動もしない、帰宅部ルートしか残されていない鞠。
選んでいる場合じゃないなと思い直して、机の下にあった右手を動かした。
その一瞬の動作を、離れた席にも関わらず確認することに成功した新もまた。
鞠の挙手にあわせる速度で、右手を天井に伸ばしたのだ。
「お! 三石と一条! 買って出てくれたのか!」
(え! 一条くん⁉︎)
先生の言葉に驚いて廊下側の一番前席に視線を向けた。
そこには自分と同じように右手を挙げる新の姿があって、血の気が引いていくのがわかった。