新くんはファーストキスを奪いたい
「初めまして、二組の笹野唯子です。男子バスケ部のマネやってます」
「一組の、三石鞠です」
「北斗から話は聞いてたよ〜、子供の頃から一緒にいる幼馴染が同じ高校にいるって」
「え?」
「会ってみたかったんだ、よろしくね鞠ちゃん」
そう、北斗にとって自分はただの幼馴染。
やましい事など一度もなかったから、平気な顔で彼女にも話しておけるだろう。
でも、今はこのツーショットを見たくはなかった鞠。
せめてクレープを食べて癒された後の方が、とも思ったが。
結局プラマイゼロになってしまうから、やはり会いたくなかった。
「今日部活休みなんだよ。だから放課後デートってやつ」
「……ほ、北斗がデートなんて感慨深いね」
「うるせ、鞠は何しに?」
「別に、クレープ食べにきただけ」
決して放課後デートの邪魔はしませんから、と目的の違いを示したかった。
そうして直ぐに別れるはずだったのに、唯子が良かれと思ってクレープの話題に乗っかってきた。
「もしや新しくできたクレープ屋さん? あそこ美味しかったよ!」
「えっ」
「ねぇ北斗、三人で行こうよ! もっと鞠ちゃんと話したいし」
ついさっき初めましての会話をしたばかりの唯子が、昔から友達だったような調子で絡んでくる。
元々そういう明るい性格なのか。それとも彼女としてマウントをとっているのか。
疑うことはしたくなくても、鞠はそんなことばかり考えてしまう自分が嫌になる。
そして肩にかけた鞄の持ち手をぎゅっと握りしめて、悲しみに耐えながらこの場をどう切り抜けるべきなのか悩んでいると。
突然、鞠の肩に誰かの手が添えられて、そのまま引き寄せられた。