新くんはファーストキスを奪いたい



「定休日⁉︎」



 オープンしたばかりの割には店の周辺に人気がないなと思ったら、本日は一週間に一度の定休日らしい。

 最近の鞠は本当にツイていないことの連続で、そろそろ天に見放されている勢いを感じていた。
 心底残念そうな表情を浮かべて、新に向かってしゅんと頭を下げる。



「付き合わせてごめん……帰ろっか」
「食べていかないの?」
「定休日だよ? 無理でしょ」



 そう言って踵を返す鞠だったが、今度はその手を取って引き止める新。

 綺麗な指先にもかかわらず大きな手のひらに包まれて、つい異性を感じてしまった鞠は頬を赤く染めていると。
 新は所持していた鍵を使って、店のドアを開け放った。



「ええ! うそ⁉︎」
「ほら、入って」
「な、一条くん何者?」
「いいから早く、他の人に見られないうちに」



 何だか犯罪臭漂う行動に肝を冷やしながら、薄暗い店内に入った鞠。
 続いて店内に足を踏み入れた新は、静かにドアを閉じて内側から鍵をかけた。



(え、なにこれ。二人きりにされた……?)



 よくよく考えてみると、定休日の誰もいない店内に侵入し、新の手によって今閉じ込められている。

 そしてゆっくりと鞠に目を向けた新の表情が薄らと確認できたが、綺麗な顔に高身長、すらりとした体のシルエットに。
 鞠は少しだけ、身震いを起こした。

 そんな心情に気づいたのか、新が無表情で徐々に鞠へと向かってくる。



「い、一条く……?」
「三石さんて、隙ありすぎない?」
「はい?」
「俺が悪い男だったらどーすんの?」
「な、なにを言っ……」



 意地悪な台詞を吐きながら近づいてきた新が、身構える鞠の目の前に止まった。


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