新くんはファーストキスを奪いたい
04. 健康診断



 翌日の一時間目は、一年生の健康診断が予定されていた。
 鞠と新のいる一組と、北斗と唯子のいる二組が合同で身長や視力などを検査する。

 健康診断の用紙を渡されて、高校指定のジャージに着替えた二つのクラスの生徒達は、広い体育館に集められた。
 一定間隔で用意された検査ブースに先生が待機しており、混雑していない検査を見つけて各自測っていくスタイル。

 そして測定を終えた者から制服に着替えて教室に戻り、予習をするという指示が出されていた。

 そんな中、背筋を伸ばして身長計に乗っていた鞠は、最後の項目となる身長測定検査の真っ最中。



(すっかり忘れていたけど、昨日のこと北斗と彼女が他の生徒に漏らしたらマズイよね)



 北斗と唯子と共に行動するのを避けたくて、偶然居合わせた新とクレープ屋に行く設定を押し倒した。
 咄嗟についた嘘だったが、結局は本当の出来事となって、クレープは美味しくいただいた鞠。

 ただ、鞠と新の仲を疑われても仕方ないような行為だったと、今更ながらに後悔していた。



(せめて北斗には口止めメールしておけばよかった……)



 焦りを滲ませて顔を顰めた鞠の頭に、コツンと軽い衝撃が加わり現在の身長が測定された。



「156センチです」
「はい……(去年と同じ!)」



 成長の喜びを感じられず、また昨日の出来事に対する不安で鞠の表情は暗いまま。

 全ての検査を終えて体育館を出たところに、珍しく一人で廊下を歩く新の背中を見つけた。

 すると、声をかけたわけではなかったのに、何かを察したように新がタイミング良く振り向いた。



「鞠だ。今終わり?」
「あ、うん。最後になっちゃった」



 鞠に気付いた新は何だか嬉しそうに微笑んでいて、つられて鞠も笑顔で応え会話を交わす。


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