新くんはファーストキスを奪いたい
「返信困ることは簡単に想像ついた。それでも送った」
「……妬けるって言ったこと?」
「本当は鞠ともっと話したいのに、恭平と仲良くされると逆転するから」
「逆転? なんのこと?」
素直に打ち明けてくれた新だったが、その真意まではまだ掴めなくて。
先ほどの恭平の言葉を思い出してしまった鞠は、徐々に胸が高鳴るのを覚えた。
しかし、色々と考えを巡らせていた新が出した答えは。
僅かに頬を赤く染めながら、咳払い混じりの控えめな声と、大きな独占欲。
「え……と、鞠の友達として俺は一番でいたいと……」
「っえ⁉︎」
「恭平に、負けたくなくて」
そういうことだったのか、と鞠は呆気に取られていた。
新は友達として“妬ける”というワードを使用したに過ぎず、そこに恋愛としてのジェラシーなんて何一つなかった。
そんなことは初めからわかっていたのに、深読みし過ぎた自分が恥ずかしくなる。
ただ、新の口から真実が明らかになった今、ようやく安堵した鞠は自然と笑みをこぼした。
「そんな事考えてたの? 新くん友達たくさんいるんだから、私なんて気にせず」
「鞠は特別なんだよ」
「え?」
「特別な、女の子だから」
静かな廊下に微かに聞こえた新の声は、鞠の耳に届いて留まる。
友達の中でも特別ということは、それだけ自分は新に信頼されているんだと。
そう思うとじわじわと嬉しさが込み上げてきて、照れながら微笑んでみた。
「あ、りがと……私も新くんのこと特別信頼してるよ」
「…………ありがとう(やっぱり特別の意味伝わってないな)」
今はまだ匂わす程度にしておきたい新だったが、それすらも届いていない様子に焦りを覚える。
しかし、慌てるなと自分に言い聞かせて、“友達”としての距離を縮めることに全力を注いだ。
(これからだから覚悟していて、鞠)
友達として信頼を得たのがわかった新は、第二関門を突破した気分で。
次はいよいよ、異性として意識してもらうための作戦に移行する。