新くんはファーストキスを奪いたい
翌週の折り返し地点、水曜日の放課後。
本日は校舎内中庭の花壇整備のため、美化委員が集められた。
芝生の上にはシャベルや如雨露が既に用意されていて。
衣服が汚れることを想定し、ジャージに着替え軍手をしている委員たちに、佐渡委員長が指示を出す。
「まずは雑草抜きをお願いします」
「はーい」
委員たちは花壇の周りに腰を下ろし、雑談しながら雑草を抜いていく。
そこで一つ足りないものに気づいた佐渡委員長が、早速一年リーダーの鞠を呼びつけた。
「三石さん、悪いんだけど雑草集める半透明のゴミ袋持ってきて」
「どこに保管されているんですか?」
「屋外倉庫よ、駐車場の近くにあるから」
「わかりました……」
屋外倉庫なんて見かけたことない、と不安になりながら人通りの無い校舎裏の駐車場に向かっていると。
少し遅れて新が一緒についてきてくれた。
「俺も探すの手伝うよ」
「あ、ありがとう〜! 一人じゃ心細くて」
「だと思った」
そう言って優しく微笑む新に対して、ますます信頼度は深まっていく。
並んで歩く時も、自然と歩幅を合わせてくれることにも気づいていたし。
何より、特別な友達認定されている事実が、鞠の自信にも繋がって。
美化委員の活動も新となら全うできると、頑張る気持ちが強くなる。
「鞠、あれが倉庫じゃない?」
「本当だ! 駐車場のすぐ近くだったね」
案外簡単に見つけられて安心した鞠は、新と視線を交わして笑顔を向けた。
その一つ一つに、新の我慢が募るとも知らず――。