新くんはファーストキスを奪いたい
ゴミ拾い活動を終えた委員たちが再び生徒玄関に集合して、集めたゴミを回収する。
そして佐渡委員長が真面目に作業したみんなを労い、その場での解散となった。
放課後の静かな校舎内で、自分の足音がやけに響く。
そんなことを感じながら、鞄を取りに自分のクラスに向かう新の背中を見つめたまま、鞠はその後を気まずそうに歩いた。
(どうしよう、もう一度謝ったほうがいいのかな……)
だけど、二回目も無視されてしまうと流石に心が折れそうで、その不安から声をかけられなかった。
先に一組の教室内に入っていった新に続いて、鞠が教室に足を踏み入れる。
すると、何故かすぐそこで立ち止まっていた新の背中に、危うく衝突するところだった。
「わ、びっくり……!」
「……さっき、ごめん」
「え? なんで新くんが謝るの?」
「聞きたくない話が耳に入ったことによる、八つ当たりだったから」
傾きかけた夕日の色が、微かに教室内を照らす。
表情こそ見えないが、少し後悔の念を纏う新の背中を鞠は感じていて。
どうやら雑談が不快にさせたわけではなく、その内容が不快だったらしいと理解した。
しかし、話の内容を思い出そうとしてみたが、新にべったり寄り添う紗耶の姿が印象的で記憶があやふや。
このままでは再発防止ができないと焦りながらも、もう一度謝るチャンスが巡ってきたと鞠は思った。