新くんはファーストキスを奪いたい
しかし、やっと打ち明けることができた新は、それを許すはずがない。
「ダメ、聞かなかったことにされたくない」
「うっ……」
「それに今すぐ返事が欲しいわけじゃないし」
「え、そう……なの?」
「俺の気持ち知っていて欲しかった、その上でデートして欲しいだけ」
「デー……はい?」
予想もしていなかった単語を聞き、人生でそれらしきことを経験したことがない鞠は、首を傾げて新を見る。
すると至って真面目な顔つきで、もう一度それを強調した。
「デートだよ。空いてる土日教えて」
「ちょ待って、デートって何だっけ。先ずはデートを辞書で調べてから」
「鞠ー?」
「は、はい……」
「照れ隠しなのはわかるけど、俺もそろそろ進みたいの理解して?」
そう言って、スラリと長い腕が鞠に向かって伸びてきたと思ったら。
淡い桃色の唇が人差し指によってフニっと閉ざされた。
「だからちょっと、黙ろっか」
「っ……!」
不敵な笑みを浮かべる新は、鞠のファーストキスを奪う日を待ち望んでいて。
ついに想いを伝えた次は、鞠が自分を好きになることを何としても達成させたい。
(早く俺を好きになって、そうしたらいつでも鞠の夢を叶えてあげられるよ)
新の準備は万端で、鞠の気持ち次第で直ぐにでもその唇を奪いたいと思っているのだから。
そのためにもこのデートで、何としても鞠の心を動かしてみせると決心していた。