新くんはファーストキスを奪いたい
そんなことに気付くはずもない鞠は、調理担当の話し合いに笑顔で参加する。
すると、ローツインテールと穏やかな声を持つ、この度リーダーとなった梨田が鞠に話しかけてきた。
「三石さんはクレープ作ったことある?」
「あ、私クレープは好きなんだけど食べる専門で……」
「わかるわかる、私も大好きだよ〜」
「梨田さんも?」
「うん、でもついに自分で作ってみたくなって、今お菓子作り勉強中なんだ」
「え、すごい!」
落ち着いた優しい雰囲気を漂わせる梨田の会話で、すっかり気分が上がった鞠は。
この学祭も、準備段階の現在も、きっと楽しく活動できそうと予感した。
調理担当のメンバーも、リーダーの梨田をはじめ優しそうな人が揃っていて安心する。
「調理器具のレンタルと、メニュー決め、ドリンクもあった方がいいよね?」
「必要な材料リスト作って、後日先生にも確認してもらおう」
各々が意見を出し、和気藹々と会議が進む中。
成功させたいという意欲が鞠の中で強く湧き出て、ついぽろっと口から言葉が出てきた。
「定番メニューの他に私たちで考えたオリジナルメニュー入れたり、とか?」
「いいね! お客さんにも興味持ってもらえそう!」
「フルーツ全種類使ったり?」
「クッキーとか入れちゃう?」
「美味しそう!」
会話が弾み梨田が笑顔を咲かせて色んな案を出し、つられて鞠も表情が緩む。
入学して二ヶ月が経ち、ようやくクラスメイトの中で波長の合う女の子の友達を見つけられた。