世界くんのタカラモノ
俺は思わずしゃがみ込むと宇宙と視線を合わせた。

「なぁ宇宙、ママさ、マジで虫取り上手な人カッコいいって言ってた?」

「え?うーん、たぶん言ってたと思うけど?」

俺はすぐに梅子にバッタを見せる宇宙の横で誇らしげにする俺を思い浮かべた。

(結婚5年目、一回惚れ直してもらうのもアリかも……バッタ……ならいけるか、黄緑色だしな……アスパラガスの先っちょだと思えば……うん、なんとかなるかもしれない……)

その時トタトタと足音が聞こえて銀河が両手に溢れんばかりのお砂場セットを抱えている。

「パパー、準備できたよー」

「あぁっ、おいっ!銀河!」

見れば銀河が通ってきた廊下にはヘンゼルとグレーテルを彷彿とさせるように細かい砂が点々とついている。

「パパー早くー」
「パパ。俺ももう靴履いていい?」

「はぁ……掃除機は後回しだな。ほら宇宙は、虫取り籠持って、銀河は手に持ってるやつスーパーの袋に入れてやるからこっちこい」

(マジで梅子さんはいっつもどうやってコイツらまとめてんだ?)

俺はすでに梅子が恋しくなってきたが、弱気と不安を消し去るように軽く頭を振ると、子供達の手を引きながら車のキーをズボンに押し込んだ。
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