世界くんのタカラモノ
俺は結菜に目線を合わせてしゃがみ込んだ。

「お名前は?言えるかな?」

「えと……あの……ゆい、な」

潤んだ大きな瞳で顔を真っ赤にしながら、小さな声で結菜が俺に挨拶をする。

「結菜ちゃんね、俺は世界。パパのお友達だよ。であっちで石拾ってる赤いTシャツが宇宙。青いTシャツが銀河。双子なんだけどさ、良かったら遊んでやって」

宇宙と銀河を指差してやれば、結菜が殿村に確認するように見上げた。

「いいよ、お父さん此処で見てるから綺麗な石探しておいで」

結菜がすぐに駆けていく。転ばないか心配そうに見つめる殿村の視線は驚くほどに優しく穏やかだ。

(お父さんね……)

宇宙と銀河の横に並んで石を拾い始めた結菜を見ながら、俺達は並んで砂場のすぐそばのベンチに腰掛けた。見上げれば青空が広がっていて新緑が風に揺れるだびにサワサワと音を立てて心地よい。

「……すっかり父親っすね」

「それは僕のセリフだけどな。まさか子犬くんが二児のパパだなんてね」

「ですねー。まさか双子とは思いませんでしたけど、俺も梅子さんも一人っ子だし子供は二人欲しかったんで……まぁ、幸せっすね。俺似ですけど」

「たしかに、どう見ても御堂の子だね。梅子の遺伝子まで噛み殺すなんてさすがだね」

「それ褒めてます?けなしてません?」

「あはは、受け取り方は任せるよ」

「なんすか、それ」 

俺達は顔を見合わせて笑った。

まさか殿村とこうやって休日に公園で互いの子供同士を遊ばせながら、パパトークをする日がくるなんて殿村に噛みつきまくっていた新入社員時代の俺からは想像もつかなかった。
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