世界くんのタカラモノ
梅子はいつだって甘い匂いがする。子供達がいうのもわかる、ずっとそばにいたい優しい陽だまりみたいな匂いがする。

「ねぇ、梅子さん……その……帰ってきたら夜は……俺の相手してくれる?」

一卵性である双子の我が子はまだまだ手がかかるということもあり、梅子を抱いたのは確か一ヶ月前だ。

仕事が忙しく互いに寝かしつけをしたあとはそのまま眠ってしまうのだが、たまの休みくらい夫婦の時間も欲しい。2人で抱き合って眠りたい。

梅子が俺の背中をスウェットごと抱きしめた。

「うん。私も……たまには……世界くんと一緒に寝たいから……」

「じゃあ約束」

俺は頬を梅子の唇に寄せると人差し指で頬を指差した。

「え?」

「早く」

「う、ん……」

梅子がキョロキョロしながら俺の頬にそっと唇を落として離す。俺はすぐに梅子の顎を掴み上げた。 

「せかっ……ンン」

一度だけと思ったのに梅子に触れればすぐに歯止めが効かなくなる。俺は唇を離してはすぐにまた梅子の唇を塞いで舌を割り入れる。

「……ダ、メ……世界くんっ!」

「いてっ」


再びトタトタと小さな足音達がこちらにくるのに気づいた梅子が、思い切り俺を突き飛ばした。

(ちっ……キスマつけそびれたじゃねーかよ)

俺は何事もなかったかのようにスウェットのズボンに両手を突っ込むと目線を足音に向ける。
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