世界くんのタカラモノ
「ねー、パパママお話終わった?」
「僕達ヒマだよー。つまんないよー」

「あ……宇宙も銀河もごめんね」

梅子は膝をつくと宇宙と銀河を見ながら両手でそれぞれの頭を撫でた。

「ママ、お友達とお昼ご飯食べたら帰ってくるから、パパとお留守番がんばれるかな?」

「俺、余裕だし」

宇宙がニッと笑う。

「僕も全然平気っ」 

銀河も負けじと梅子ににんまり笑顔を返す。

俺は子供達の頭をポンポンと撫でた。

「ほら、子供らもこう言ってるし、梅子さんも楽しんできてね」

梅子がクスクス笑った。

「三人ともおんなじ顔」

「ま、そうすね。明らか……俺似っすね」

今年4歳になる一卵性の双子である我が子は十人いたら十人俺似だと言う程に俺にソックリだ。
俺の言葉に宇宙も銀河も口を尖らせた。

「俺、ママ似が良かった!」
「僕もー、ママの顔のが好き」 

(……ちっ、ガキどもめ)

「黙れっ、俺の顔の何が不満だよっ!はっきりいって世界級のイケメンだろうが!この俺に似て産まれ出たことをありがたく思えよな!」

「ちょっと……世界くん」

「あ、すいません。また、そのつい……」 

宇宙が俺の腕を小さな手で引っ張った。

「あーっ!パパがまたママのこと困らせてるー」

「宇宙!またってなんだよっ」

そしてもう片方の俺の手を銀河が引っ張る。

「ねぇパパ、ママいないけど泣かずにお留守番できる?」  

「あのな銀河!パパは子供じゃねーんだよっ」

「あの、世界くんやっぱり……」

梅子の戸惑った顔を見ながら俺は宇宙と銀河の首根っこを捕まえると、梅子に視線を向けた。

「全然余裕っす!こいつらは俺が父親の威厳にかけてなんとかします!この留守番案件は俺に任せてください!てことで森川さんとのランチ楽しんできてください」

「……わかった。ありがとう」

「気をつけてくださいね」

子供達も梅子からパッと離れると小さな手を振った。 

「ママいってらっしゃい」
「ママ帰ってきたら抱っこね」

梅子がにこりと頷くと手を振り返しながらようやく玄関扉を閉めた。
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