その断罪に異議あり! 断罪を阻止したらとんだとばっちりにあいました
政略結婚というのはもともと打算や損得が念頭にある。
家同士の力加減や、利益などといったものが働く。中には好意を抱いて結婚する者もいるが、大体は先に結婚して、後から好意を寄せるか、何年経っても何とも思わないかのどちらかだ。
「えっと……それは、婚約したフリをして、皆を騙すということですか?」
「人聞きの悪い。第一、婚約したフリではなく、婚約は本当にしますよ。ただ……」
「ただ?」
「婚約したからと言って、必ず結婚するとは限らない」
「そ、それは……そうですが」
アレッサンドロとシャンティエのような解消の仕方は稀だが、婚約話が持ち上がった時と状況が変わって解消するケースないわけではない。
「では、こういうのはどうですか?」
悩むベルテにヴァレンタインはさらに畳み掛けた。
「殿下はシャンティエと同じ十七歳、卒業まであと一年半ですね」
「はい」
「その後はやはり国家錬金術師を目指すのですか?」
「そうしたいと思っています。そのために上の学校に行きたいとは思っていますが、父上が許してくれるかどうかわかりません」
今通っている学園は一般教養を学ぶための学舎で、その後の進路は人によって様々だ。
専門的な学業を修めるなら、さらに上の専門課程に進む必要がある。
ベルテが目指す国家錬金術師になるには、学園卒業後、さらに二年修学しなくてはならない。
もちろん成績が優秀なら二年を一年に短縮し、試験さえ受かれば二年もかからずに資格を得ることは出来る。
しかし、それには父である国王の了承がいる。
今の状況では、それは恐らく厳しいとは思う。
「私と婚約していただけるのであれば、進学の許可を陛下にお願いしましょう。婚約者として私が認めるなら、陛下もお認めくださるやもしれません」
「え、そ、そんなこと……出来るのですか?」
「掛け合って進学の許可を得るだけで、進学出来るかは殿下の学園での成績と試験の結果次第です。そこは私も陛下も何とも手心を加えることはできません」
「それは、もちろん。正々堂々と試験に受かって入ります。試験に受かる自信はありますから。でも……」
あまりに都合が良すぎる話に、ベルテは疑惑の目を向ける。
「あなたはそれで、いいのですか? 何だか私にだけ都合が良すぎますし、それに婚約はどうなるのですか?」
国家錬金術師になるだけでなく、その後もベルテな研究と錬金術師としての仕事をこなしたい。
となれば、彼との婚約はどうなるのだろう。
「婚約は、もし殿下が国家錬金術師になってから、改めて話し合いましょう。それまで婚約者として私のエスコートで公式の場に何度か顔を出していただえれば、私はそれで余計な縁談話に煩わされることも無くなるでしょう」
「でも、それでも私と婚約しても、自分と結婚してほしいと思う人はいるのではないですか?」
誰もが完璧な令嬢と認めるシャンティエでさえ、あのようにカトリーヌがしゃしゃり出てきたのだ。
普通に考えて、太刀打ちできないとわかっていてもだ。
そして王女だと言っても、ベルテ如きでは麗しの貴公子ヴァレンタイン・ベルクトフの婚約相手として、自分のほうが勝っていると言ってくる令嬢もいるのではないだろうか。
それに、他国の王女が名乗りを上げたら、ベルテでは防ぎきれない。
いくらか減るだけで、完全には無くならないとベルテは思う。
「では、周りが割って入るのを躊躇うほど、我々がアツアツぶりを見せつければいいのでは?」
「あ、アツアツ……いえ、それは…、せいぜい普通に仲がいい程度でなら……」
ヴァレンタインとイチャイチャしている自分の姿を想像し、ベルテはブルブル震えた。
「残念です」
「ざ、残念って……そういうことをしたいなら、他の方を当たってください。私は無理です」
「仕方がありません。アツアツぶりを見せつけるのは諦めます。でも、普通に婚約者として振る舞ってはいただけるのですね。それなら譲歩します」
「普通にって、何をさせられるのですか?」
なんだか聞くのが怖くなったが、聞いておくべきかと尋ねた。
「そんなに怯えなくても難しいことは何もありまけん。そうですね。夜会には二人で出席し、最低三回はダンスを踊ってもらいます」
「ダ、ダンス……」
実は運動が苦手なベルテは、ダンスの授業ではいつも落第点ギリギリだった。
「大丈夫です。私がちゃんとリードします。そういうのは得意ですから」
ベルテの不安を感じ取って、ヴァレンタインが安心させるように微笑んだ。
家同士の力加減や、利益などといったものが働く。中には好意を抱いて結婚する者もいるが、大体は先に結婚して、後から好意を寄せるか、何年経っても何とも思わないかのどちらかだ。
「えっと……それは、婚約したフリをして、皆を騙すということですか?」
「人聞きの悪い。第一、婚約したフリではなく、婚約は本当にしますよ。ただ……」
「ただ?」
「婚約したからと言って、必ず結婚するとは限らない」
「そ、それは……そうですが」
アレッサンドロとシャンティエのような解消の仕方は稀だが、婚約話が持ち上がった時と状況が変わって解消するケースないわけではない。
「では、こういうのはどうですか?」
悩むベルテにヴァレンタインはさらに畳み掛けた。
「殿下はシャンティエと同じ十七歳、卒業まであと一年半ですね」
「はい」
「その後はやはり国家錬金術師を目指すのですか?」
「そうしたいと思っています。そのために上の学校に行きたいとは思っていますが、父上が許してくれるかどうかわかりません」
今通っている学園は一般教養を学ぶための学舎で、その後の進路は人によって様々だ。
専門的な学業を修めるなら、さらに上の専門課程に進む必要がある。
ベルテが目指す国家錬金術師になるには、学園卒業後、さらに二年修学しなくてはならない。
もちろん成績が優秀なら二年を一年に短縮し、試験さえ受かれば二年もかからずに資格を得ることは出来る。
しかし、それには父である国王の了承がいる。
今の状況では、それは恐らく厳しいとは思う。
「私と婚約していただけるのであれば、進学の許可を陛下にお願いしましょう。婚約者として私が認めるなら、陛下もお認めくださるやもしれません」
「え、そ、そんなこと……出来るのですか?」
「掛け合って進学の許可を得るだけで、進学出来るかは殿下の学園での成績と試験の結果次第です。そこは私も陛下も何とも手心を加えることはできません」
「それは、もちろん。正々堂々と試験に受かって入ります。試験に受かる自信はありますから。でも……」
あまりに都合が良すぎる話に、ベルテは疑惑の目を向ける。
「あなたはそれで、いいのですか? 何だか私にだけ都合が良すぎますし、それに婚約はどうなるのですか?」
国家錬金術師になるだけでなく、その後もベルテな研究と錬金術師としての仕事をこなしたい。
となれば、彼との婚約はどうなるのだろう。
「婚約は、もし殿下が国家錬金術師になってから、改めて話し合いましょう。それまで婚約者として私のエスコートで公式の場に何度か顔を出していただえれば、私はそれで余計な縁談話に煩わされることも無くなるでしょう」
「でも、それでも私と婚約しても、自分と結婚してほしいと思う人はいるのではないですか?」
誰もが完璧な令嬢と認めるシャンティエでさえ、あのようにカトリーヌがしゃしゃり出てきたのだ。
普通に考えて、太刀打ちできないとわかっていてもだ。
そして王女だと言っても、ベルテ如きでは麗しの貴公子ヴァレンタイン・ベルクトフの婚約相手として、自分のほうが勝っていると言ってくる令嬢もいるのではないだろうか。
それに、他国の王女が名乗りを上げたら、ベルテでは防ぎきれない。
いくらか減るだけで、完全には無くならないとベルテは思う。
「では、周りが割って入るのを躊躇うほど、我々がアツアツぶりを見せつければいいのでは?」
「あ、アツアツ……いえ、それは…、せいぜい普通に仲がいい程度でなら……」
ヴァレンタインとイチャイチャしている自分の姿を想像し、ベルテはブルブル震えた。
「残念です」
「ざ、残念って……そういうことをしたいなら、他の方を当たってください。私は無理です」
「仕方がありません。アツアツぶりを見せつけるのは諦めます。でも、普通に婚約者として振る舞ってはいただけるのですね。それなら譲歩します」
「普通にって、何をさせられるのですか?」
なんだか聞くのが怖くなったが、聞いておくべきかと尋ねた。
「そんなに怯えなくても難しいことは何もありまけん。そうですね。夜会には二人で出席し、最低三回はダンスを踊ってもらいます」
「ダ、ダンス……」
実は運動が苦手なベルテは、ダンスの授業ではいつも落第点ギリギリだった。
「大丈夫です。私がちゃんとリードします。そういうのは得意ですから」
ベルテの不安を感じ取って、ヴァレンタインが安心させるように微笑んだ。