その断罪に異議あり! 断罪を阻止したらとんだとばっちりにあいました
学園には寮があるが、入寮は必須では無いためベルテは王宮から毎日通っていた。
ヴァレンタインと対面したのが週末。それから二日後、ベルテはビクビクしながら登校した。
しかし、彼とベルテの婚約したという話はまだ広まっていないのか、彼女に向けられる視線は休みの前と特に変わりは無かった。
「お義姉様、おはようございます」
しかしほっと胸を撫で下ろしたのも束の間、ベルテは自分に掛けられた言葉に身を強張らせた。
「お、お義姉様?」
振り向くとそこには長く綺麗な横紙を耳に掛けて微笑みかける、シャンティエがいた。
アレッサンドロと彼女の婚約が解消されたという正式発表はまだだが、誰もが婚約解消を疑ってはいない。
「シャ、シャンティエ嬢、今、何ておっしゃいました?」
シャンティエのすぐ近くにいた女生徒が、聞き間違いだろうかと尋ね返す。
「おはようございますと、お義姉に…」
「シャンティエ嬢、ちょっとこちらへ?」
彼女が全て言い切る前に、ベルテはシャンティエの腕を掴んでその場から離れた。
「まあ、どうされたのですか、お義姉様」
「あの、シャンティエ嬢、そのお義姉様というのは…」
人気の無い学舎の裏にシャンティエを引っ張ってきて、ベルテは辺りに誰もいないのを確認してから問い質した。
「ふふ、少し気が早いと思いましたが、言ってみたかったのです。私、姉妹がほしかったので」
「だ、だからって、あなたと私は年齢も同じだし…それに、今はまだ婚約の話は秘密にしてもらえるかしら」
「なぜですか?」
「なぜって。出来れば婚約についてはあまり周りに知られたくないというか」
「白薔薇を愛でる会」の会員がどこにいるかわからない。今さら好感度を上げようとは思わないが、余計な衆目の関心を集めたくもない。
「もしかして、殿下…」
シャンティエがそんなベルテの態度に眉を顰める。
きっとベルテがヴァレンタインとの婚約を、まだ納得できていないと思ったかもしれない。
「ふふ、恥ずかしがられなくてもいいのですよ」
「は、恥ずかし…別に、そんな、私は」
「わかりましたわ。残念ですが『お義姉様』とお呼びするのは控えます。ですが、ベルテ様とお呼びすることはご許可いただけますか?」
「え、ええ。それは構わないけど…」
「うれしい。私のこともシャンティエと呼んで下さい」
はにかんでそう言うシャンティは、いつものように凛とした孤高の氷の美姫ではなく、年相応の可愛い令嬢だった。
「シャ、シャンティエ嬢?」
「シャンティエです。私、ずっと学園での勉強と王太子妃教育で忙しくて、親しい方もあまりいなかったんです。周りは皆私のことを遠慮がちに遠巻きに見るだけで、本当には心を開いてくれませんでした」
それを聞いてベルテはハッとした。
それはベルテも同じだったからだ。ベルテもこれまでシャンティエとも距離を置いていた。それは彼女がアレッサンドロの婚約者だったからだ。
だが、王太子の婚約者として立派にその責務を果たそうとする彼女の努力と心意気は認めていた。
その才能と努力を活かしても、結局手柄はすべて王となったアレッサンドロに持って行かれるのは残念に思っていた。
王太子妃教育のために費やした五年の歳月は無駄になったが、彼女が国王に言ったように、得た知識は無駄にはならないだろう。
アレッサンドロのような馬鹿な自分一番の男より、デルペシュ卿の方が何十倍もいい相手だ。
出来れば彼女の恋がうまく行くことを願う。
「お義姉様とお呼びするのは諦めますが、お友達にはなってくれますか? ベルテ様」
「と、とも…友達?」
「はい」
(友達…友達って、わ、私も同性の友達って初めてかも)
学園長やヴァンを友達と呼べればの話だが、彼らを除くとベルテも友達がいないことに気がついた。
「友達…」
「駄目でしょうか?」
シャンティエが上目遣いにベルテを見る。
「だ、駄目…では。でも」
「でも?」
「友達って、何をするの?」
「え?」
ヴァレンタインと対面したのが週末。それから二日後、ベルテはビクビクしながら登校した。
しかし、彼とベルテの婚約したという話はまだ広まっていないのか、彼女に向けられる視線は休みの前と特に変わりは無かった。
「お義姉様、おはようございます」
しかしほっと胸を撫で下ろしたのも束の間、ベルテは自分に掛けられた言葉に身を強張らせた。
「お、お義姉様?」
振り向くとそこには長く綺麗な横紙を耳に掛けて微笑みかける、シャンティエがいた。
アレッサンドロと彼女の婚約が解消されたという正式発表はまだだが、誰もが婚約解消を疑ってはいない。
「シャ、シャンティエ嬢、今、何ておっしゃいました?」
シャンティエのすぐ近くにいた女生徒が、聞き間違いだろうかと尋ね返す。
「おはようございますと、お義姉に…」
「シャンティエ嬢、ちょっとこちらへ?」
彼女が全て言い切る前に、ベルテはシャンティエの腕を掴んでその場から離れた。
「まあ、どうされたのですか、お義姉様」
「あの、シャンティエ嬢、そのお義姉様というのは…」
人気の無い学舎の裏にシャンティエを引っ張ってきて、ベルテは辺りに誰もいないのを確認してから問い質した。
「ふふ、少し気が早いと思いましたが、言ってみたかったのです。私、姉妹がほしかったので」
「だ、だからって、あなたと私は年齢も同じだし…それに、今はまだ婚約の話は秘密にしてもらえるかしら」
「なぜですか?」
「なぜって。出来れば婚約についてはあまり周りに知られたくないというか」
「白薔薇を愛でる会」の会員がどこにいるかわからない。今さら好感度を上げようとは思わないが、余計な衆目の関心を集めたくもない。
「もしかして、殿下…」
シャンティエがそんなベルテの態度に眉を顰める。
きっとベルテがヴァレンタインとの婚約を、まだ納得できていないと思ったかもしれない。
「ふふ、恥ずかしがられなくてもいいのですよ」
「は、恥ずかし…別に、そんな、私は」
「わかりましたわ。残念ですが『お義姉様』とお呼びするのは控えます。ですが、ベルテ様とお呼びすることはご許可いただけますか?」
「え、ええ。それは構わないけど…」
「うれしい。私のこともシャンティエと呼んで下さい」
はにかんでそう言うシャンティは、いつものように凛とした孤高の氷の美姫ではなく、年相応の可愛い令嬢だった。
「シャ、シャンティエ嬢?」
「シャンティエです。私、ずっと学園での勉強と王太子妃教育で忙しくて、親しい方もあまりいなかったんです。周りは皆私のことを遠慮がちに遠巻きに見るだけで、本当には心を開いてくれませんでした」
それを聞いてベルテはハッとした。
それはベルテも同じだったからだ。ベルテもこれまでシャンティエとも距離を置いていた。それは彼女がアレッサンドロの婚約者だったからだ。
だが、王太子の婚約者として立派にその責務を果たそうとする彼女の努力と心意気は認めていた。
その才能と努力を活かしても、結局手柄はすべて王となったアレッサンドロに持って行かれるのは残念に思っていた。
王太子妃教育のために費やした五年の歳月は無駄になったが、彼女が国王に言ったように、得た知識は無駄にはならないだろう。
アレッサンドロのような馬鹿な自分一番の男より、デルペシュ卿の方が何十倍もいい相手だ。
出来れば彼女の恋がうまく行くことを願う。
「お義姉様とお呼びするのは諦めますが、お友達にはなってくれますか? ベルテ様」
「と、とも…友達?」
「はい」
(友達…友達って、わ、私も同性の友達って初めてかも)
学園長やヴァンを友達と呼べればの話だが、彼らを除くとベルテも友達がいないことに気がついた。
「友達…」
「駄目でしょうか?」
シャンティエが上目遣いにベルテを見る。
「だ、駄目…では。でも」
「でも?」
「友達って、何をするの?」
「え?」