その断罪に異議あり! 断罪を阻止したらとんだとばっちりにあいました
さすが精鋭ばかりが出場するだけあって、武闘大会は初めからかなり白熱していた。
大会は二部構成になっており、まずは剣と槍、弓矢、そして魔法でそれぞれ実技が行われる。
剣と槍では一定時間魔導人形との一騎打ちを行い、攻撃の強さや当たった場所で点数が加算される。
弓矢なら五本の矢を放ち、的に当たった場所で点数が付けられる。
そして魔法は、得意とする攻撃魔法を魔石に放ち、その威力と精度を競う。
ただ人によっては攻撃魔法ではなく治癒魔法などを、得意とする者もいるため、そういった魔法が得意な者は、魔力量で底上げが許される。
部門ごと、そして相互得点で上位者が決まる。
そしてクジで組み合わせが決まり、第二部が始まる。
形式は単純に勝ち抜きとなる。
第一部は広場を四箇所に分けて行われていたが、それぞれの様子はスクリーンに映し出されていたので、観覧席からでもはっきり見ることが出来た。
ヴァレンタインは第一部でかなりの成績を収めた。
式典用の騎士服も様になっていたが、黒一色の訓練用の質素な服も、彼が着ると高級そうに見える。
「なかなかやるね、ヴァレンタイン殿は」
第一部が終わり、その結果を見てディランが言った。
「自信があるようだったから、こんなものでしょ」
ベルテは努めて平静に答えたが、内心はドキドキだった。
ヴァレンタインは剣も槍も弓も人並み以上に上手だったが、特に魔法が凄かった。風と炎が得意らしく風圧と火力はかなりのものだった。
(あんなに実力があるのね。知らなかったわ)
顔だけでなく、騎士としての力量の凄さにベルテは素直に感心していた。
「さて、ここからが武闘大会の醍醐味です。下級騎士たちにとっては己をアピールして成り上がるいい機会ですからね。私もここで活躍して今の地位を得ることが出来ましたから」
平民から騎士団長まで出世したいい見本がデルペシュ卿だ。
そしてベルクトフ侯爵家の令嬢シャンティエとの婚約で、彼はさらに騎士たちの憧れの対象となった。
「今年は誰が花を一番多く授けられるでしょうか」
騎士たちから花を一番多く贈られた貴婦人は、社交界の花と呼ばれ一目置かれるそうだ。
女性にとっても大事な習慣らしい。
「私も独身の頃はたくさんいただきましたが、ベルクトフ侯爵夫人には敵いませんでしたわ」
エンリエッタが独身時代を懐かしんで言った。
「シャンティエ様たちのお母様ってそんなにモテたの?」
今でも美しいベルクトフ侯爵夫人だが、若い頃はもっとモテたのだと言う。
少し離れた場所で夫と娘と共に、息子の勇姿を見守る彼女の姿を窺う。
「DNAの奇跡だね」
「で…?」
聞き慣れない言葉が聞こえ、ディランを振り返った。
「今なんて言ったの?」
「美男美女の子は美男美女だと言ったのです」
そんな言葉ではなかったように思ったが、第二部がすぐに始まってしまったので、それ以上追求しなかった。
父が言ったようにディランは確かに賢い。一を知って十を知るではないが、習う前から色々なことを知っている。まるで生まれたときから知っているかのように。
それでいて、魔法の話になると、目を輝かせて魔力が涸れるまで魔法を使い続けることがある。
少年らしいところと、妙に大人びたところがある。
それがディランだった。
次々と対戦が続き、勝った者はそれぞれ花を贈っていく。
家族や恋人、婚約者などはある程度貰えると踏んでいるので、貰って嬉しそうではあるが、それほど驚いていない。
しかし、告白と共に花を贈られた人たちからは、歓声が上がっている。
「あれって、受け取らない人とかいるの?」
今のところそんな人はいなさそうだが、好きでもない相手から贈られることだってある。
「基本的には、それはありません。そんなことすれば士気が下がりますから。それに贈られる方も、贈られないことの方が辛いですからね」
女性にとっては花を贈られることが名誉なのだと、デルペシュ卿は言う。
贈る側も、ノリのようなところもあるらしい。特にそういう相手がいなくても、お金を払って受け取る相手になってもらう場合もあると言う。
それはそれで夢がない話だ。
しかし、そうでなくても家族や特定の相手以外は、その後本当に付き合うこともあれば、何の発展もない時もあるそうだ。
そんな話をしているうちに、ヴァレンタインの番が近づいてきた。
「姉上、もしヴァレンタイン殿以外の人が花をくれると持ってきたら、取り敢えず受け取ってあげてくださいね」
「そんな人、いるわけが……」
「ベルテ殿下」
ディランがヴァレンタイン以外の人が花を贈ってきたらどうするかなどと、ふざけて言っていると、ベルテの前に金髪の巻毛に薄青の瞳をした男性がやってきた。
「どなた?」
「エルマン・ルーガードと申します。家は伯爵位をいただいております」
名を名乗った青年は、ヴァレンタインと負けず劣らず整った顔立ちをしていたが、その細められた薄青の瞳には、どこか油断ならない雰囲気を漂わせていた。
「どうぞ、私からの花をお受け取りください」
大会は二部構成になっており、まずは剣と槍、弓矢、そして魔法でそれぞれ実技が行われる。
剣と槍では一定時間魔導人形との一騎打ちを行い、攻撃の強さや当たった場所で点数が加算される。
弓矢なら五本の矢を放ち、的に当たった場所で点数が付けられる。
そして魔法は、得意とする攻撃魔法を魔石に放ち、その威力と精度を競う。
ただ人によっては攻撃魔法ではなく治癒魔法などを、得意とする者もいるため、そういった魔法が得意な者は、魔力量で底上げが許される。
部門ごと、そして相互得点で上位者が決まる。
そしてクジで組み合わせが決まり、第二部が始まる。
形式は単純に勝ち抜きとなる。
第一部は広場を四箇所に分けて行われていたが、それぞれの様子はスクリーンに映し出されていたので、観覧席からでもはっきり見ることが出来た。
ヴァレンタインは第一部でかなりの成績を収めた。
式典用の騎士服も様になっていたが、黒一色の訓練用の質素な服も、彼が着ると高級そうに見える。
「なかなかやるね、ヴァレンタイン殿は」
第一部が終わり、その結果を見てディランが言った。
「自信があるようだったから、こんなものでしょ」
ベルテは努めて平静に答えたが、内心はドキドキだった。
ヴァレンタインは剣も槍も弓も人並み以上に上手だったが、特に魔法が凄かった。風と炎が得意らしく風圧と火力はかなりのものだった。
(あんなに実力があるのね。知らなかったわ)
顔だけでなく、騎士としての力量の凄さにベルテは素直に感心していた。
「さて、ここからが武闘大会の醍醐味です。下級騎士たちにとっては己をアピールして成り上がるいい機会ですからね。私もここで活躍して今の地位を得ることが出来ましたから」
平民から騎士団長まで出世したいい見本がデルペシュ卿だ。
そしてベルクトフ侯爵家の令嬢シャンティエとの婚約で、彼はさらに騎士たちの憧れの対象となった。
「今年は誰が花を一番多く授けられるでしょうか」
騎士たちから花を一番多く贈られた貴婦人は、社交界の花と呼ばれ一目置かれるそうだ。
女性にとっても大事な習慣らしい。
「私も独身の頃はたくさんいただきましたが、ベルクトフ侯爵夫人には敵いませんでしたわ」
エンリエッタが独身時代を懐かしんで言った。
「シャンティエ様たちのお母様ってそんなにモテたの?」
今でも美しいベルクトフ侯爵夫人だが、若い頃はもっとモテたのだと言う。
少し離れた場所で夫と娘と共に、息子の勇姿を見守る彼女の姿を窺う。
「DNAの奇跡だね」
「で…?」
聞き慣れない言葉が聞こえ、ディランを振り返った。
「今なんて言ったの?」
「美男美女の子は美男美女だと言ったのです」
そんな言葉ではなかったように思ったが、第二部がすぐに始まってしまったので、それ以上追求しなかった。
父が言ったようにディランは確かに賢い。一を知って十を知るではないが、習う前から色々なことを知っている。まるで生まれたときから知っているかのように。
それでいて、魔法の話になると、目を輝かせて魔力が涸れるまで魔法を使い続けることがある。
少年らしいところと、妙に大人びたところがある。
それがディランだった。
次々と対戦が続き、勝った者はそれぞれ花を贈っていく。
家族や恋人、婚約者などはある程度貰えると踏んでいるので、貰って嬉しそうではあるが、それほど驚いていない。
しかし、告白と共に花を贈られた人たちからは、歓声が上がっている。
「あれって、受け取らない人とかいるの?」
今のところそんな人はいなさそうだが、好きでもない相手から贈られることだってある。
「基本的には、それはありません。そんなことすれば士気が下がりますから。それに贈られる方も、贈られないことの方が辛いですからね」
女性にとっては花を贈られることが名誉なのだと、デルペシュ卿は言う。
贈る側も、ノリのようなところもあるらしい。特にそういう相手がいなくても、お金を払って受け取る相手になってもらう場合もあると言う。
それはそれで夢がない話だ。
しかし、そうでなくても家族や特定の相手以外は、その後本当に付き合うこともあれば、何の発展もない時もあるそうだ。
そんな話をしているうちに、ヴァレンタインの番が近づいてきた。
「姉上、もしヴァレンタイン殿以外の人が花をくれると持ってきたら、取り敢えず受け取ってあげてくださいね」
「そんな人、いるわけが……」
「ベルテ殿下」
ディランがヴァレンタイン以外の人が花を贈ってきたらどうするかなどと、ふざけて言っていると、ベルテの前に金髪の巻毛に薄青の瞳をした男性がやってきた。
「どなた?」
「エルマン・ルーガードと申します。家は伯爵位をいただいております」
名を名乗った青年は、ヴァレンタインと負けず劣らず整った顔立ちをしていたが、その細められた薄青の瞳には、どこか油断ならない雰囲気を漂わせていた。
「どうぞ、私からの花をお受け取りください」