極甘悪魔な御曹司の溺愛は揺るがない【財閥御曹司シリーズ伊達家編】
 それは、銀座にある高級ホテル。今は姉がいる家に帰る気になれなかった。
 ホテルに着くと、まっすぐ四十階にあるバーへ。
 最上階にあるバーは照明が薄暗く、落ち着いた雰囲気で、大きな窓からは都会の摩天楼を一望できる。
 三十席ほどある席は半分ほど埋まっているが、店内は静か。
 カウンター席に座ると、メニューを見ずにあるカクテルを頼んだ。
「サングリア、お願いします」
 迷わずサングリアにしたのは、前に翔平くんと姉の三人で来た時に同じものを頼んだから。お酒を飲み慣れていない私に、彼が『サングリアとかいいと思うよ』と勧めてくれたのだ。
 赤ワイン色のカクテルが綺麗で気に入ったのだけれど、なんで彼との思い出の場所に来ちゃったんだろ。彼に知られたら未練がましい女だって言われそうだ。
「どうぞ」
 バーテンダーがテーブルにカクテルを置くと、「ありがとうございます」と礼を言って、グラスを手に取った。
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