極甘悪魔な御曹司の溺愛は揺るがない【財閥御曹司シリーズ伊達家編】

　この十カ月、心の奥底ではあの人が私を迎えに来てくれることを願っていた。
　でも、あの人は現れなかった。
　当然よね。彼のマンションを出てから、私は何度も引っ越しをした。そう簡単に見つけられるわけがない。
　ううん、たとえあのまま東京にいたとしても、彼は私を迎えに来なかったかも。
　私はあの人にとって、姉の身代わりでしかなかったのだから――。
　頭ではそう理解しているのに、気づけばあの人の姿を探している。
　ホント、未練がましいわね。馬鹿な私。
　いつまで夢を見ているのだろう。もう赤ちゃんだっているのに。
　ズキッと胸が痛む。
　現実を見なければいけない。この子を守れるのは私だけ。強く生きるんだ。
　愛する人との間にできた大切な我が子。しっかりしなきゃ。
　そう自分に言い聞かせるも、今後の人生に迷いや不安を感じずにはいられない。
　そんな私を落ち着かせるように砂浜に寄せる波は静かで、頬に触れる風は優しかった。