極甘悪魔な御曹司の溺愛は揺るがない【財閥御曹司シリーズ伊達家編】
私を呼ぶ低くて甘いその声も、優しい肌の温もりも忘れていない。
「颯人さん……」
 恋しくて……恋しくて……たまらずその名を口にする。
 それと同時に、彼との出会いから今までのことが洪水のように頭の中に流れ込んできた。
 あれは去年の私の誕生日――。

「お連れの方が見えないようですが、食事はどうされますか?」
 レストランの店員が遠慮がちに私に声をかけた。
 ずっと腕時計を見ていたから、今の時刻は知っている。
 午後七時四十分だ。
 店を予約した時間は七時。翔平くんは仕事で遅れているのだろうか。
 何度も【待ち合わせの時間過ぎてるけど大丈夫?】と彼にメッセージを送ったけれど、既読にもならない。
「すみません。もう少し待ちます」
 店員に謝りながらそう伝えて、彼からの連絡を待っていると、ようやく返事が来た。
【ごめん。急にドイツに行くことになって今日は行けない。今、空港に向かってる】

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