Chocolate Lily

順一はそう思い、防犯カメラの映像を見ることから始めるかと捜査会議が終わってすぐ、部屋を出た。



「待て！逃げるな！」

数日後、順一は大声を上げて走っていた。少し先には歩美の婚約者の直人が走っている。順一は年齢を感じさせない速度で、逃げ続ける直人を追っていた。

「太宰さん！この先は自殺の名所として知られる崖があります！まさか、彼はそこから飛び降りる気じゃ……」

順一の隣を走る美麗が息を切らしそうになりながら言う。彼女が走るたびに紫陽花のピアスが激しく揺れた。

「まずい！それだけは止めないと！」

順一はさらに速度を上げる。このままもしも彼が飛び降りてしまったら、ここまでの捜査が全て水の泡だ。それは全ての真実を闇の中に葬ることになると、順一はよく知っている。

今日、順一と美麗は直人から事情を聞くためにあの花屋から二時間も離れた場所にある直人の自宅を訪れていた。チャイムを鳴らし、直人が緊張したように顔を見せ、美麗が事件のことを話し出した途端に逃走したのである。