Chocolate Lily
馬鹿馬鹿しい、そう言いたげな美麗に順一はこれまで調べたことを思い出しながら話す。

「お前、黒百合がどんな花か知ってるか?」

「知りませんよ。花なんて、名前くらいしか知りません」

「黒百合はな、北海道の低地や東北地方の高山地帯に咲いている花だ。この花は綺麗な見た目をしているんだが、この花が咲いているとすぐに人はわかるんだ。黒百合はハエなどに花粉を運んでもらうために、ハエを引き付けるために人間が思わず「臭い」と思う強い匂いを出すんだ。……お前の香水みたいにな。それを牧さんはこの花で示したんだろう。匂いのキツい人間が犯人だって」

「は?香水がちょっとキツいくらいで何ですか?そんなことで犯人扱いですか?大体、被害者と私は会ったことなんて一度もーーー」

そう話す美麗に順一は違う写真を見せる。それは、他県にあるラブホテルの防犯カメラの映像の一部だ。そこには腕を組んでホテルの中へと入っていく美麗と歩美の姿がある。

「ホテルに行くほど親しい仲だったんだな。……お前と牧さんは紫陽花の花と同じ関係か」

紫陽花の花言葉は「浮気」。美麗と歩美は禁断の関係だったのだ。美麗の唇が震える。
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