誓い~お前は俺が守る~
黒◯◯
町外れの高台にある、一軒家。
鈴馬と母親との思い出の家。
そこに、夏馬と二人で暮らしている鈴蘭。


“すず。
すずは、俺が守る。
俺が守るよ……………!”


「━━━━━っは!?」
ガバッと起き上がる、鈴蘭。

息が上がり、肩で息をしてしていた。

「はぁはぁ……今の…声…」

最近、よく見る夢だ。
人影が出てきて、鈴蘭に言う。

“すずは、俺が守る”と━━━━━━

天馬じゃない声。
夏馬でもない。
低く、優しく穏やかで心地よい声。

「パパ……の…声…」

物腰が柔らかくて、鈴蘭は父親・鈴馬の怒ったところを見たことがない。

夏馬とは正反対で、争いが嫌いな人間。
まさに鈴蘭は、鈴馬とそっくりだ。

鈴蘭は、鈴馬が大好きだった。
もし……鈴馬が亡くなっていなかったら“ブラコン”ではなく“ファザコン”になっていただろう。


「すずー、朝ごはん出来たよ~」
ノックの音がして、夏馬の声が聞こえてくる。

「はーい!」
鈴蘭は、元気よく返事をしてベッドを降りた。


朝食を夏馬と仲良く食べ、学校へ行く準備をしていると呼び鈴が鳴る。

「ん!天くんかな?
はぁーい!」

「━━━━ちょっと待った!!」
パタパタと玄関に向かう鈴蘭を、引き留める夏馬。

「え!?にぃに?」

「インターフォンで確認もせずに出ちゃダメだよ」

「え?」

「俺が確認するから、すずは待ってて」
「うん」


「━━━━あ、天馬っす!おはようございます。
すず、準備出来てます?」
夏馬がインターフォンに出ると、案の定天馬だった。

「おはよ、天」
応対して、玄関に向かい鍵を開けた。

「ちょっと待ってろ。
今、すずを呼ぶから」
天馬を招き入れ、踵を返す夏馬。
その勢いで、ポケットからパスケースが落ちる。

「はい。
…………ん?夏馬さん!
今、なんか落ちましたよ?」
天馬が拾い、夏馬に渡す。

「ん?
あー、すまん」

「ん?これ…夏馬さんと……すず?」
パスケースから古い写真が落ち、それを見て天馬が言った。

写真には━━━━学ランを着崩した夏馬と、真っ赤なワンピースを着た愛くるしい少女が手を繋いでいた。

「あぁ、可愛いだろ?
これは、すずの小学校入学した時の写真だ。
俺とすずのツーショットの写真。
この頃は、父さんも母さんも生きていたからな。
四人で撮った写真もあるぞ。
父さんと母さんとすずの三人の写真。
すず一人の写真。
沢山撮ったから。
………………この時が、一番“幸せ”だった……」

「え……?」

「この写真を撮って、一年も経たない内に母さんが病気で死んで、父さんはすずが小5の時に死んだ。
すずが“あいつ”を呼ぶようになったのも、その頃だ」
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