ねえ、私と恋しませんか?
「ところで、何か考え事をされているみたいでしたけど、山中さんは何かお悩みがあるんですか?」

レイカさんに訊ねられ、俺は肩を震わせる。こんな綺麗な人にサトミのことを話すのは正直嫌だ。でもその大きな目で見つめられたら、嘘を吐く気にはなれなくて、俺は浮気をしていた事実は伏せて「彼女を怒らせてしまった」ということをレイカさんに話した。

「まあ、何て酷い女なの!彼氏さんが迎えに来てくれたのにそんな態度を取るなんて!ありえないわ!」

レイカさんは上品に口元を手で覆い、驚いた様子を見せる。美人はどんな仕草をしても絵になるな。そう思いながら俺がドキドキしていると、レイカさんの華やかな顔がグッと俺の顔に近付いた。

「ねえ、私と恋しませんか?」

レイカさんはそう言い、俺を蕩けるような目で見つめてきた。



それから数週間、俺はサトミに全く連絡を取ることも、病院の前で待ち伏せすることもなく、あのバーでレイカさんと会うようになった。もうサトミのことなんてどうでもよくなっていて、レイカさんに夢中になっている俺がいる。
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