全治三ヵ月
「すみません!」
私は電話を切ると、慌てて店を飛び出し階段を駆け下りた。
あまりに慌てすぎて、思わず階段下でつんのめって体がよろけるもなんとか足を踏ん張って島崎さんの前に立つ。
「こんな外でお待たせして申し訳ありません」
「いえ、こちらこそお忙しい時にわざわざ出てきて頂き申し訳ない」
すまなさそうに顔を上げた島崎さんを見て一瞬呼吸が止まる。
本部長さんっていうくらいだから、年配の人ん想像していたけれど、目の前にいる島崎さんはまだ三十代にしか見えない、洗練された美しい男性だった。
島崎さんはすぐに名刺を取り出し私に手渡した。
名刺には、【ジャパン物流株式会社 物流本部本部長 島崎 裕貴】と書かれてある。
「それから、こちらは詰まらないものですが」
そう言って、見るからに上等なフルーツが入った紙袋を私の前に差し出した。
「ありがとうございます……」
普段、悠や業者のおじさんとしか接していない私にとって、島崎さんみたいな男性は、明らかにこれまであまり関わったことがないタイプだ。いかにも賢そうで、洗練されていて、品があって……いやいや、そんなこと思うなんて、悠や他のみんなに失礼だよね。
それにしても、こんな大手会社に勤めてる上に、感じもよくてイケメンな男性って存在するんだ。まるでドラマみたい。
悠の事故の相手側の人間だとういのに全く不謹慎な話。撤回撤回。
頭の中で自分の頬を軽くひっぱたいた。
「お店はしばらくお休みすると伺ったのですが」
「はい。彼が復活する三ヵ月はお休み頂戴する予定です」
「そうですか……その間、奥様は?」
さっきから「奥様、奥様」って言われてるけど、奥様じゃないんだけどと思いつつ、説明するのも面倒なのでそのまま答える。
「数日は店の後処理等でバタバタしますが、その後のことはまだ何も……」
「そうですか……」
島崎さんは、その美しい顔を苦しそうに歪めうつむき、深く息を吐いた後あらためて私の目をしっかりと見据えた。
「このような状況を作った責任は全てこちらにありますので、三ヵ月の間、何かこちらでお役に立てることがあれば遠慮なくお申し出下さい」
そんな風に言えちゃうところは、さすが大手と感心しながらも、島崎さんの誠意ある眼差しと言葉に胸が熱くなる。
「ありがとうございます。お気持ちだけ……」
『お気持ちだけ頂きます』……そう言いかけて、ふとある思いが頭に浮かんだ。
悠が動けない三ヵ月の間、このまま無収入で何もせずにいるわけにもいかない。
店のために、私にできることがきっとあるはず。
いつも悠に頼りっぱなしだった私が今やれること。このチャンスは今しかないかも。
「あの、もしよろしければ……」
「はい」
長身の島崎さんは、少し前かがみになり何でもどうぞと言わんばかりに頷いた。
私は電話を切ると、慌てて店を飛び出し階段を駆け下りた。
あまりに慌てすぎて、思わず階段下でつんのめって体がよろけるもなんとか足を踏ん張って島崎さんの前に立つ。
「こんな外でお待たせして申し訳ありません」
「いえ、こちらこそお忙しい時にわざわざ出てきて頂き申し訳ない」
すまなさそうに顔を上げた島崎さんを見て一瞬呼吸が止まる。
本部長さんっていうくらいだから、年配の人ん想像していたけれど、目の前にいる島崎さんはまだ三十代にしか見えない、洗練された美しい男性だった。
島崎さんはすぐに名刺を取り出し私に手渡した。
名刺には、【ジャパン物流株式会社 物流本部本部長 島崎 裕貴】と書かれてある。
「それから、こちらは詰まらないものですが」
そう言って、見るからに上等なフルーツが入った紙袋を私の前に差し出した。
「ありがとうございます……」
普段、悠や業者のおじさんとしか接していない私にとって、島崎さんみたいな男性は、明らかにこれまであまり関わったことがないタイプだ。いかにも賢そうで、洗練されていて、品があって……いやいや、そんなこと思うなんて、悠や他のみんなに失礼だよね。
それにしても、こんな大手会社に勤めてる上に、感じもよくてイケメンな男性って存在するんだ。まるでドラマみたい。
悠の事故の相手側の人間だとういのに全く不謹慎な話。撤回撤回。
頭の中で自分の頬を軽くひっぱたいた。
「お店はしばらくお休みすると伺ったのですが」
「はい。彼が復活する三ヵ月はお休み頂戴する予定です」
「そうですか……その間、奥様は?」
さっきから「奥様、奥様」って言われてるけど、奥様じゃないんだけどと思いつつ、説明するのも面倒なのでそのまま答える。
「数日は店の後処理等でバタバタしますが、その後のことはまだ何も……」
「そうですか……」
島崎さんは、その美しい顔を苦しそうに歪めうつむき、深く息を吐いた後あらためて私の目をしっかりと見据えた。
「このような状況を作った責任は全てこちらにありますので、三ヵ月の間、何かこちらでお役に立てることがあれば遠慮なくお申し出下さい」
そんな風に言えちゃうところは、さすが大手と感心しながらも、島崎さんの誠意ある眼差しと言葉に胸が熱くなる。
「ありがとうございます。お気持ちだけ……」
『お気持ちだけ頂きます』……そう言いかけて、ふとある思いが頭に浮かんだ。
悠が動けない三ヵ月の間、このまま無収入で何もせずにいるわけにもいかない。
店のために、私にできることがきっとあるはず。
いつも悠に頼りっぱなしだった私が今やれること。このチャンスは今しかないかも。
「あの、もしよろしければ……」
「はい」
長身の島崎さんは、少し前かがみになり何でもどうぞと言わんばかりに頷いた。