全治三ヵ月
「お母さん、どう?今日は智も一緒よ」
母はそう言いながら、閉じられた薄ピンク色のカーテンをゆっくりと開けた。
点滴に繋がれた祖母が薄眼を開け、こちらに視線を向ける。
腕にはいくつも点滴の跡が痛々しく残っていた。
「智ちゃんも来てくれたのかい?」
目尻にいっぱい皺を寄せ微笑む祖母は、私の方に手を伸ばす。
私はその手をしっかりと握りしめた。
柔らかくてすべすべした手。以前はもっとふっくらとして温かかったのに今はとても冷たい。
「おばあちゃん、久しぶりね」
「ああ、本当だよ。会いたかったよ」
祖母は何度も頷きながら私の目を優しく見つめる。
「智ちゃんは元気にしているのかい?お店は忙しい?」
「うん、忙しいかな」
「無理しちゃいけないよ。体が一番大事なんだから」
「ありがとう。でも、その言葉そのままおばあちゃんに返すわ」
私はそう言って笑った。
祖母もふふふと、口を窄めて笑う。
母は、テレビの下の棚から祖母の洗い物を入れ替えながら「ほんと、智は忙しすぎるんだから」とため息交じりに言った。
「智の花嫁姿、早くおばあちゃんにも見せたいのに」
まただ。
祖母の前でそれを言うのは反則だよ。
聞こえないふりをして、祖母の手の甲を軽くさすった。
「結婚が全てじゃないよ」
祖母は、私の目をじっと見つめ私にだけ聞こえるような声で言う。
「今何って?」
母が怪訝な表情で私たち二人の間に顔を近づける。
「秘密だよね?」
私と祖母は顔を見合わせて笑った。
穏やかな時間。
窓の向こうには青空が広がり、新緑が揺れていた。
やっぱり祖母は私にとって一番の理解者。
いつまでもそばにいてほしい存在。
「早く元気になってね」
祖母の額にかかった前髪をそっとかき上げた。
母はそう言いながら、閉じられた薄ピンク色のカーテンをゆっくりと開けた。
点滴に繋がれた祖母が薄眼を開け、こちらに視線を向ける。
腕にはいくつも点滴の跡が痛々しく残っていた。
「智ちゃんも来てくれたのかい?」
目尻にいっぱい皺を寄せ微笑む祖母は、私の方に手を伸ばす。
私はその手をしっかりと握りしめた。
柔らかくてすべすべした手。以前はもっとふっくらとして温かかったのに今はとても冷たい。
「おばあちゃん、久しぶりね」
「ああ、本当だよ。会いたかったよ」
祖母は何度も頷きながら私の目を優しく見つめる。
「智ちゃんは元気にしているのかい?お店は忙しい?」
「うん、忙しいかな」
「無理しちゃいけないよ。体が一番大事なんだから」
「ありがとう。でも、その言葉そのままおばあちゃんに返すわ」
私はそう言って笑った。
祖母もふふふと、口を窄めて笑う。
母は、テレビの下の棚から祖母の洗い物を入れ替えながら「ほんと、智は忙しすぎるんだから」とため息交じりに言った。
「智の花嫁姿、早くおばあちゃんにも見せたいのに」
まただ。
祖母の前でそれを言うのは反則だよ。
聞こえないふりをして、祖母の手の甲を軽くさすった。
「結婚が全てじゃないよ」
祖母は、私の目をじっと見つめ私にだけ聞こえるような声で言う。
「今何って?」
母が怪訝な表情で私たち二人の間に顔を近づける。
「秘密だよね?」
私と祖母は顔を見合わせて笑った。
穏やかな時間。
窓の向こうには青空が広がり、新緑が揺れていた。
やっぱり祖母は私にとって一番の理解者。
いつまでもそばにいてほしい存在。
「早く元気になってね」
祖母の額にかかった前髪をそっとかき上げた。