先輩が卒業するまでに(短編)
「最近、徳永さんメールくれないね。」
靴を履き替えながら
向こう側の3年のロッカーから先輩の声が聞こえる。
『え……?』
私が上履きに履き替えて、先輩の元へ駆け寄って行くと、
先輩は寒そうな息を吐いてこっちを見た。
「体育祭のあととか…結構メールくれてたのに、最近ないなって。」
江口先輩はそう笑いながら言って
ロッカーの鍵を閉めた。
『それは………先輩もうすぐ入試だから……迷惑かな?って……』
その場に立ち止まり、俯いたまま言う。
「迷惑なんて…ははっ。俺はいつでもオッケーだよ。」
顔をあげると、そこには愛しい先輩の笑顔があった。
本当ですか?
迷惑じゃないの?
オッケーなんて言われたら
私………もっと先輩を好きになっちゃうよ。
先輩は、
じゃあまたね、と言って校舎の中の階段を上がっていった。
先輩…昨日の人は誰ですか?
彼女じゃないんですか?
私、頑張ってもいいですか?
少しの間、
さっきまで先輩がいた場所から動けなかった。