先輩が卒業するまでに(短編)
「ミキは、バレンタイン渡さなかったの?」
由梨が前の席に座って
私の机に頬杖をついた。
『バレンタイン…作ったんだけどね。』
渡せなかった。
一言、渡したいんですけどってメールが
どうしても送れなかった。
だって、
まだ江口先輩に彼女がいないなんて
完璧な安心がないから…
あの日の帰り道のことを思い出すだけで、気がひけてしまって………
私が不安そうに
渡せなかったことを無理矢理笑って話すと
由梨は心配げな顔をした。
「ミキ〜……」
わかってる。
バレンタインを逃した私には
もう
江口先輩に会うのは卒業式が最後になってしまうだろうってこと。
由梨はすごい。
勇気を出して、自分の手で川瀬先輩の心を掴んだんだから。