先輩が卒業するまでに(短編)
「ちょっと、こっちおいで………」
先輩は泣きじゃくる私に手招きして、大勢の人の中をかき分けて行く。
先輩の大きな背中を見つめながら着いて行くと
そこは
初めて江口先輩に出会った場所
自転車置き場だった。
私たち以外に誰もいない静まり返った自転車置き場で
江口先輩は足を止め振り返った。
「ここ、覚えてる?」
『え??』
「俺が3年になったばかりの時、ここで朝から自転車倒してた1年生って…あれ、徳永さんだったよね?」
忘れない
私が恋に落ちた瞬間
『先輩…覚えててくれたんですか??』
先輩は深く頷いた。
「体育祭で話しかけられた時、思ったんだ。前に見たことがあるなあって。それで、思い出したんだ。」
先輩…