先輩が卒業するまでに(短編)
『“覚えてるよ、体育祭の時話しかけてくれた子だよね”って。』
私が答えると、由梨はパアっと顔を明るくした。
「じゃあ良かったじゃん!」
『でも……江口先輩と全然目合わないし、なんかどうやったら進展できるかなあ?』
「うーん…。先輩たち受験だもんね。私も今送りたいけどメール控えてる。」
由梨は愛しそうに川瀬先輩を見ていた。
「でもいいじゃん。川瀬先輩手振ってくれるんだし!羨ましいー!」
私が言うと、由梨はそんなことないよって手を動かしながら赤くなった。
いいなあ…
私も江口先輩ともっと仲良くなりたい。
今まで恋をしたことなんてなかった私は
江口先輩に出会った瞬間
生まれて初めての感覚を知ったんだ。
実は
江口先輩と話したのは体育祭の日が初めてではなかった。
私の恋は、
江口先輩の名前や、江口先輩がどんなに人気者かを知る前から
始まっていたんだ。