先輩が卒業するまでに(短編)
恋に落ちた時
入学してまだ間もないある日。
4月の風はまだ冷たくて
散っていく桜の花びらはなんだか可哀想だった。
今まで通っていた小学校や中学校は家から近かった方だけど、
高校生になっていきなり電車通学になった私は
早起きに慣れることができなくて
慌てて電車を降りると、駅から自転車をこいだ。
携帯を取り出し、時間を見る。
『うわー。遅刻だあ。』
高校生活
始まってそっこう初遅刻。
まだ友達や勉強も慣れている空気じゃなくて、分からないことばかりなのに
私はただ焦りを感じていた。
学校に着き、自転車置き場に向かうと
もうみんな校舎の中に入っているようで
自転車置き場にいるのは私だけだった。
たくさんの自転車にまぎれて自分の自転車を止める。
かごからカバンを引っ張り出した時だった。
ガシャーン…!!
カバンの紐がハンドルに引っ掛かり
並べられている自転車が将棋倒しになった。