先輩が卒業するまでに(短編)
『最悪ーっ!!』
カバンを地面に置いて、
一人自転車を立て直していく。
その時、後ろを振り返ると制服をかっこよく着こなした背の高い人が
一緒になって自転車を起こしてくれていた。
『ありがとうございます。』
私がそう言うと
その人は何も言わずににこっと笑った。
少し金色が混じった茶色い髪。
左耳にはオシャレなピアス。
制服のズボンのポケットから見える携帯のストラップ。
自転車を起こすのを手伝ってくれている
大きくて強そうな手。
言葉を失っちゃうくらい
整った顔。
真っ黒な瞳。
私の心は一気に吸い込まれた。
「はい。」
私が最後の自転車を立て直すと、
その人は地面に放り投げてあった私のカバンを
軽くパンパンと土を払って手渡してくれた。