非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
 大切な女性(ひと)がいながら抱きしめられることも、帰りを心配されることも、眠りの呪いのことも……何が湊斗の真実なのかがわからない。

 一毬の心に、徐々に溜まっていたモヤモヤが、思わず口をついて出てしまったのだ。


「あれは、接待なんだよ。それとこれとは別だろ?」

「ふーん。随分と色っぽい接待なんですね」

 一毬はそう言いながら、ふてくされたようにそっぽを向いてしまう。

「……お前なぁ」

 湊斗は大きくため息をつくと、足を投げ出してソファに寄り掛かった。


 天井に顔を向け、閉じた目元を押さえる湊斗の姿を、ちらっと横目で伺う。

 忙しくて疲れている湊斗に、これ以上不満をぶつけてはいけない。

 一毬のことを心配して遅くまで待っていてくれた上、あんなに優しく抱きしめてくれたのだ。


 ――それだけで、満足しなきゃダメだ。


 一毬は自分に言い聞かせる。

 それでも……。

 一度口にしてしまった不満は、出口を求めるように次から次へと湧き上がってくる。
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