非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
 一毬は押さえつけられて自由が利かない両腕の力を抜くと、湊斗の熱を帯びて潤んだ瞳の奥を見つめる。


 ――湊斗さん。あなたの真実は何ですか?


 鼓動の音は外まで聞こえるんじゃないかと思うほど、駆け足で鳴り響いている。

 すると、ゆっくりと顔の角度を変えながら、湊斗の薄く形のいい唇が迫ってきた。

 息をするのも忘れた一毬は、吸い込まれそうな湊斗の瞳に耐え切れず、ぎゅっときつく目を閉じる。

 体中の意識が唇に集まった時、湊斗の吐息をわずかに感じた。


「湊斗さん……」

 その吐息に応えるように、一毬の口から声がもれる。

 その瞬間、湊斗ははっとしたように顔を上げた。


 瞼を開けた一毬の前に飛び込んできたのは、明らかに困惑した様子の湊斗の顔だった。

「一毬……俺……」

 湊斗は一毬の上に覆いかぶさったまま、押さえていた腕をほどくと、一毬の背中に手を回し、身体を起き上がらせようとする。


「嫌です」

 一毬は抵抗するように、湊斗のシャツの胸元を両手でぎゅっと掴むと、再びソファに倒れ込んだ。
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