非・溺愛宣言～なのに今夜も腕の中～

「あ、あの、ダビデさん。ご迷惑をおかけしました。その、私……昨日の記憶がほぼないというか」

　思わずダビデと呼びかけ、たどたどしく話す一毬に、男性がもう一度大きな笑い声を立てる。

「お前、天然か？　俺はダビデじゃない。湊斗(みなと)だ。藤堂湊斗(とうどうみなと)。覚えとけよ」

　湊斗は顔を覗き込ませると、一毬の鼻先をぴんっと指で弾く。


「ひゃっ！　す、すみません。……み、湊斗さん」

　一毬はベッドで飛び上がると、鼻を押さえながら慌てて頭を下げた。


「お前、借金取りに脅されて、その上ドーナツ屋をクビになったのは覚えてるか？」

「か、かすかに」

「その後、道端で倒れて。いくら問いかけても、うんともすんとも返答がなくて、慌てて病院に連れて行ったんだよ。そしたら医者に、なんて言われたと思う？」

「な、なんでしょう……？」

　一毬は嫌な予感がしながら、上目づかいに顔を上げる。