非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
 目の前でフラッシュのように繰り返される表示に、身の毛がよだつ恐ろしさに襲われるようだ。

 誰もが恐怖で凍り付き、動けずにいた。


「なんだこれ……」

 ようやく誰かが、腹の底から絞り出すような声を出した。

 その瞬間、楠木がはっとして顔を上げる。


「ウイルスだ! ウイルスに感染してる! 今すぐ、パソコンの電源を切れ!」

 楠木が鬼気迫る顔で、矢島に叫んだ。

「で、でも……。ど、どうやって……!」

 矢島は真っ青な顔のまま、しどろもどろになっている。

 震える手でようやくマウスを掴むが、当然のように何も反応しない。


 楠木は矢島を押しのけると、デスクの下に潜り込んだ。

 誰もがその様子を、固唾をのんで見守っている。


 ごそごそという音とともに、「あった」という低い声が響いた。

 楠木はデスクから顔を出すと、強引に電源プラグを引っこ抜く。

 火花を散らしてプラグが抜けた瞬間、プチンッという鈍い音が聞こえ、ディスプレイは真っ暗になった。
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