非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
「もう発表会の開催は無理なんじゃ……?」

「いや、研究の継続自体が危ないだろ」

「……犯人は誰だ?」

 しばらくして、沈黙を破るように小さな声が辺りから聞こえだす。

 次第にその渦が大きくなり「犯人を炙り出せ」という声が聞こえた所で湊斗が手を上げた。


「起きてしまったことはしょうがない。今できる最善のことをするまでだ」

 湊斗の落ち着いているが凄みのある声に、フロア内はまた静寂に包まれる。

 湊斗はぐるりと、フロア内を見回した。


「プレス発表会は予定通り開催する。総務部は本日WEBに掲載予定の、プレスリリースの書面を加工して資料の準備を進めて欲しい。牧はウイルス被害の状況把握と上層部への報告を。遼はすぐに、使用可能な研究室のデータをかき集めろ」

「で、でもデータって言ったって、フォルダが空じゃ限られてる……。どうやって発表するつもり?!」

 倉田は不安げな顔を見せるが、湊斗は落ち着いている。

「自宅パソコンに、俺の発表用原稿の元データが入ってる。社内システムにはつながってないから無事なはずだ」
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