非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
 顔は前を向いたままだか、優しくほほ笑んでいるだろう様子は伝わってくる。

 一毬も正面を向いたまま、小さく首を横に振る。


「そんな……。少しでも、何か役に立てればと思って」

「一毬らしいな」

 優しい湊斗の声に顔を上げると、目の前にほほ笑む顔が見えて、一毬はドキッとして慌てて顔を逸らした。

 ついあの日の、下から見上げた湊斗の熱のこもった瞳を思い出して、重ねてしまう自分がいる。


 一毬は慌てて話を続けるように口を開いた。

「でも、まさかこんなことが起きるなんて、思ってもみませんでした……」

「そうだな」

 湊斗はそれだけ言うと、静かに目を閉じてこめかみを押さえている。


 ただでさえ疲れているのに、一毬とのことがあってから、ここ数日あの寝室のベッドで休めていないのだ。

 そこに追い打ちをかけるように、こんな事件が起きた。

 湊斗へ与えるダメージは想像を絶する。


 その時、一毬の中で一つの答えが浮かび上がった。


 ――湊斗さんを支える一人になりたいのなら、これ以上、湊斗さんに負担をかけるのはやめよう。
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