非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
「この発表会が終わったら、お前に話しておきたいことがある」

 前を向いたまま聞こえてくる湊斗の声は、さっきまでとは違い、いつになく低く重い声だ。

「話……ですか?」

 一毬の心は、また悪い想像で一気に覆いつくされる。


 ――いつだって自信がない。だから不安になるんだ。


 一毬は、だんだんと苦しくなる胸をぐっと押さえた。


 そんな様子に気がついたのか、湊斗は振り返るとまっすぐに一毬の顔を覗き込む。

 まるで一毬の不安を、一気に取り去ろうとするかのように優しい瞳で。

「俺も、前に進みたい。一毬に出会って、初めてそう思えたんだ」

 湊斗の言葉に驚いた一毬は、「え?」と聞き返すように目をまん丸に開く。


「一毬の前で、もう逃げたくないんだ」

 湊斗はそっと手を伸ばすと、一毬の頬を人差し指で軽く触れた。

 一毬はドキドキと早くなる鼓動を、ぎゅっと両手で確かめる。


「それって……」

 言いかけた一毬の唇を、湊斗の親指がそっと撫でた。

 今はそれ以上言うなと告げるように、少し照れたような顔をしている。
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