非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
 一毬は、窓辺に立って話をする湊斗の後ろ姿を、ぼんやりと見上げる。

 この人はいったい、何を考えているのだろう?

 昨日たまたま道端で出会った一毬を部屋に入れ、自分のベッドを使わせただけでなく、借金の肩代わりや仕事までくれようとしている。

 それも半ば強引に……。


 ――社長だから? こういう強引さが普通なの?! でも……。


 一毬はもう一度、湊斗の整った横顔を見つめる。


 『お前を愛する余地は一ミリもない』


 瞳の奥の寂しさを隠すように言った、湊斗の言葉が脳裏をよぎった。


 ――あれってある意味、牽制……だよね?


 ぼんやりとしていると、いつの間にか電話を終えた湊斗が、ラックに入っていたバスタオルを一毬の顔にぐっと押し当てる。

「ぎゃ……」

 一毬は思わず派手に後ろにのけ反った。

「ぼやぼやしてる時間はない。さっさと準備しろ」

 そう冷たく言いながらも、湊斗は楽しそうに肩を揺らすと、呆気に取られる一毬を残し寝室を後にした。
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