非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
 次第にそれは大きな揺れになって、ついには声を上げて笑い出した。

 一毬はぎょっとして倉田を見つめる。


「そっかぁ……」

 ひとしきり笑った後、倉田が楽しそうに一毬に顔を向けた。

 「どういうことですか?」

 一毬は訳がわからない。


「たぶん湊斗は、今日この文章を書きかえてる」

「内容が、違うってことですか?」

「研究内容は当然同じだよ。でもね。なんていうか、俺にはもう“愛の告白”をしているようにしか見えないっていうか」

 倉田はそこまで言うと、ぷっと吹き出しながら、人差し指をぴんと立てる。


「そう! これはもう“溺愛宣言”だよね」

「はい?! で、溺愛宣言?!」

 ついつい大声を出してしまい、他の社員の目線に慌てて口元を両手で押さえた。

 発表会の原稿で溺愛宣言なんて、一体どういう意味だろう。

 全く訳がわからない。


 倉田はそんな一毬の様子にも、楽しそうに口元を引き上げる。

「きっと湊斗は、一毬ちゃんにすべてをさらけ出そうとしてる。ずっと先に進めなかった湊斗を変えたのは、一毬ちゃんだよ。湊斗はよっぽど一毬ちゃんのことが大切なんだね」
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