非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
 倉田は落ち着いた様子で、淡々と研究内容を説明していく。

 今回の研究は、今までとは全く違う視点でアプローチしており、その研究成果だけでも十分注目されるだろう。

 その上での製品化ともなれば、多くの企業が販売したがるはずだ。

 菱山はそれをわかっていて、研究のかなり早い段階から資金援助を申し出ていた。

 他の企業に割り込ませないために、湊斗と娘との結婚話まで持ちかけて。


 ――自分たちの利益しか考えないやり方には、もううんざりだ。


 倉田は顔を上げるとスクリーンの表示を、研究発表から製品化について、という内容に変更する。


「今ご説明しましたように、この研究を生かすことで、今まで正確に検出できていなかったウイルスや細菌を、短時間で検出できるようになり、即時診断する機器を製造することが可能になります」

 倉田は一旦言葉を止めると、短く息を吐く。

「当初、弊社ではより多くの検体を一度に検査できる、大型機器の開発を進めてまいりました。本日はその発表の予定でしたが……弊社の社長、藤堂湊斗の意向により、その方針を転換させていただくことにします」
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