非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
 牧は画面を確認すると、片手を上げて部屋を出て行く。

 スライド扉は音もなく静かに閉じられた。


「さっき、遼から電話が来たよ」

「倉田さんから? 発表会は、終わったんですか?」

 一毬が目線を戻すと、湊斗は穏やかな顔でうなずいている。

「一毬がパソコンを開いてくれたって。ありがとうな」

「まさかユーザー名が、“ダビデ”で設定されてるなんて思いませんでした」

「そうか? ちゃんと気に入ってるって、言っただろ?」

「もう! わかりづらすぎます!」

 一毬は頬をぷっと膨らませると、湊斗と顔を見合わせて笑いあう。


 しばらくして一毬は、ベッドの上に伸ばす湊斗の膝に手をかけた。

「私、ユーザー名を探すのに色々入力してて、気がついたんです。湊斗さんのこと、何にも知らないんだなって……。正直、ショックでした」

「一毬?」

 湊斗は首を傾げている。

「だから、私はもっと湊斗さんのことが知りたい。湊斗さんの、真実が知りたいんです」
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