非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
 一毬の言葉に湊斗は真っすぐな瞳でうなずく。

 湊斗の長い腕が一毬の肩を包み、そのままそっと抱き寄せられた。

 ふわっと心地よい香りが漂ってくる。


 ――湊斗さんの香りだ……。


 ガウンを着ていても伝わってくる湊斗の香りと温もりに、一毬はやっと安心して目を閉じた。

 湊斗の唇が一毬の後頭部に触れた時、スライド扉が勢いよく開かれる。


「社長! おっと、失礼……」

 飛び込んできた牧は、顔を赤くすると慌てて背を向けた。

 普段はいたって冷静な牧の、照れた顔は珍しい。

 一毬は湊斗と顔を見合わせると、吹き出すようにくすくすと笑った。


「倉田室長は終了後すぐに、こちらへ駆けつけるとのことでした」

 牧は気を取り直すように一つ咳ばらいをすると、一毬とは反対側のベッドサイドに寄る。

「それと、社長……」

 牧が湊斗の耳元に顔を寄せ、一毬に聞こえないように声をひそめた。

「……犯人が、逮捕されたようです」

 湊斗はしばらく間をおいた後、「そうか」とだけ返した。
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