非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
 一毬は三人の会話を聞きながら、再度じっと考える。

 いつだったか楠木が、朝からずっとディスプレイを食い入るように見つめていた日があった。

 その時は確か初めて見る画面で、なんの資料だろうと疑問に思ったのだ。


 ――そうだ……。あれは強引に食事に誘われた日。そしてその日に、タクシーでマンションの前まで送ってもらった……。


 一毬は次第に心臓が、ドキドキと早く叩きだすのを感じる。

 楠木を疑うのは性急すぎる。

 楠木は尊敬できる先輩であり、今回のウイルス騒動で一番的確な働きをし、プレス発表会の資料まで一人で作成したのだ。


 ――そんな人が、会社を裏切るなんて、考えられない。……でも。


 楠木の発言に、首を傾げることが何度かあったことも事実。


「一毬? さっきからどうした?」

 湊斗がじっと一毬の顔を見つめている。

 湊斗の声に、倉田と牧も顔を上げた。

「あの……」

 一毬は次第に苦しくなる胸元をぐっと押さえる。

 あの日、楠木と食事に行ったと伝えた時、湊斗は嫉妬したと言っていた。
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