非・溺愛宣言～なのに今夜も腕の中～
　湊斗はにんまりと口元を引き上げると、一毬の顔を覗き込んだ。

「なっ……」

　一毬は大袈裟に飛びのくと、思わず窓に頭をゴチンとぶつけた。

　「いたた……」と顔をしかめる一毬の様子に、湊斗は楽しそうに笑い声を立てている。


「あの……。一つ質問して良いですか……？」

　しばらくしてから、一毬は小さく声を出す。

「どうぞ」

　湊斗は再び目を通していた資料を一旦膝に置くと、一毬に顔を向けた。

　運転席からは、牧が聞き耳を立てている様子が伝わってくる。


「その……。どうして、隣で眠る事が条件なんですか……？」

　一毬の声に、湊斗は「うーん」と腕を組み考え込む様子を見せた後、急にぱっと顔をあげた。

「お前の、バカみたいに幸せそうな寝顔を見たからだな」

「はい？！」

　一毬は思わず声を大きくすると、慌てて口元を押さえる。

　なんだ、その失礼な言い方は！

　一毬は憤慨するが、湊斗はそんなことお構いなしだ。
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