非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~

明らかになったこと

 それから数日後、湊斗は無事に退院した。

 湊斗が襲われたことも、入院していたことも、結局社内には公にされなかった。

 湊斗は退院後すぐに出社し、倉田の発表会での発言の対応に追われている。


「なーんか社内では、俺が勝手に発言したって話になってるっぽいんだよねぇ。白い目で見られるし、肩身が狭いのなんのって」

 倉田はソファに大の字で寄り掛かると、大袈裟にため息をつく。

 今、社長室には湊斗に呼び出された一毬と倉田がいた。

 あの後、一毬も録画された動画を見たが、あれのどこが“溺愛”につながるのかいまいち理解できていない。

 “決別”につながることは、この菱山からのクレームの嵐を見てすぐにわかるのだが。


「社内には俺が説明する。今日もこの後、会長に会う予定だ」

「はいはい。そうですか」

 倉田はソファに寄りかかったまま軽く手を上げた。

「あの、湊斗さんを襲った犯人って……」

 一毬が遠慮がちに声を出す。

 つい先ほど牧が出ていく前に、犯人が逮捕されたことを口にしていたのだ。
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