非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
「あぁ。やつらは、当日金で頼まれただけで、依頼者のことは何も知らないと言っているらしい」

「ったく、目的は何だよ? ウイルス騒動とも一緒だとしたら、相当大がかりだぞ」

「まぁ、目的はプレス発表会の中止と、開発の中断だろうな。ただ、相手はまさか俺が自ら、開発をストップさせるとは思ってなかっただろう」

 TODOの研究発表は、ライバル他社の注目も大きかった。

 製品化すれば莫大なマネーが動く話だからだ。

 同様の研究を進める企業が、犯罪に手を染めてまで邪魔した可能性もあり得る。


 その時、大きなノック音が響き、牧が部屋に駆け入ってきた。

「社長、今調査会社から報告が届きまして……」

 牧は緊張したような顔つきで、A4サイズの茶封筒から数枚の資料を取り出す。

 資料を受け取った湊斗は、素早く目を走らせていたが、驚いた顔つきでぴたりと目線を止めた。

 しばらく考え込むようにじっと動かない湊斗に、一毬は倉田と顔を見合わせる。


 ――調査会社ってことは……。


 すると静まった部屋に、湊斗の鋭い声が響いた。

「今すぐ、楠木を呼べ」

 湊斗の一段と低い声に、その場は一瞬で緊張に包まれた。
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