非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
しばらくして、社長室に落ち着いたノック音が響く。
ゆっくりと開く扉から顔を覗かせたのは、いつもと変わらない楠木の顔だった。
楠木は社長に呼び出されたというのに、相変わらず堂々とした様子で颯爽と入って来たが、壁際に立ち尽くす一毬を見かけた途端、一瞬戸惑ったように足を緩める。
「楠木さん……」
一毬の小さな声は、耳に届かなかったのだろうか。
楠木はふいと前を向くと、一毬の前を何事もなかったかのように通り過ぎた。
「単刀直入に聞く」
湊斗はデスクに肘をつき、顔の前で手を組んだまま、静かに声を出す。
「はい」と答えながらも、楠木は湊斗を見下ろすような視線を送った。
「お前は、なんの目的でTODOに入った? お前が、菱山商事の元経営企画室次長だった、ということは調べがついている」
一毬は「え?」と思わず声を上げる。
楠木が菱山の元社員だったなんて、一言も聞いたことがない。
それに今回調べて明らかになったということは、入社の時点ではそれを隠していたことだろうか。
ゆっくりと開く扉から顔を覗かせたのは、いつもと変わらない楠木の顔だった。
楠木は社長に呼び出されたというのに、相変わらず堂々とした様子で颯爽と入って来たが、壁際に立ち尽くす一毬を見かけた途端、一瞬戸惑ったように足を緩める。
「楠木さん……」
一毬の小さな声は、耳に届かなかったのだろうか。
楠木はふいと前を向くと、一毬の前を何事もなかったかのように通り過ぎた。
「単刀直入に聞く」
湊斗はデスクに肘をつき、顔の前で手を組んだまま、静かに声を出す。
「はい」と答えながらも、楠木は湊斗を見下ろすような視線を送った。
「お前は、なんの目的でTODOに入った? お前が、菱山商事の元経営企画室次長だった、ということは調べがついている」
一毬は「え?」と思わず声を上げる。
楠木が菱山の元社員だったなんて、一言も聞いたことがない。
それに今回調べて明らかになったということは、入社の時点ではそれを隠していたことだろうか。